工房解説 - 陶磁器ドイツ≫マイセン Meißen ＜独＞／ Meissen ＜英＞マイセンはヨーロッパで初めて磁器製造に成功した、名実ともに西洋白磁の頂点に君臨する名窯です。ドイツのザクセン選帝侯アウグスト強王より、東洋の磁器に匹敵するような白磁作りを厳命された錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベトガーは、1708年に硬質磁器の製造方法を発見し1709年に待望の磁器製造に成功。1710年にはエルベ川畔のマイセン市に王立磁器製造工場が完成し、マイセン磁器の歴史が幕を開けました。以降、マイセン磁器はヨーロッパ中で高く評価され、特にヨハン・グレゴリウス・ヘロルトとヨハン・ヨアヒム・ケンドラーによる精緻なデザインが有名であり、その作品は、繊細な絵付けと独自のスタイルで知られています。
≫ドレスデン Dresden ＜独＞ ドレスデン陶磁器は、主にマイセン磁器工場の成功に由来します。1709年、錬金術師ベトガーが待望の硬質磁器製造に成功すると、1710年にアウグスト強王の命令でマイセン磁器工場が設立され華々しい発展を遂げました。19世紀には「ドレスデン磁器」という名称が広まりますが、これはマイセン磁器の影響を受けた他の磁器工房の製品を指すことが多く、ドレスデン自体には多くの磁器工房が存在しました。これらの工房は、それぞれが独自の技術とデザインを持ち、マイセン磁器の影響を受けつつも独自のスタイルを発展させました。
≫ヘレンド Herend ＜ハンガリー＞ 1826年、ハンガリーの首都ブダペストの北西に位置するヘレンド村で、ヴィンツェンツ・シュティングルによって創業。1839年にフィッシェル・モーリツが経営の手綱を握ると、マイセンや中国などの高級陶磁器の修復会社として成功し、そののち自社製品の製造を始めました。1842年のハンガリー産業博覧会に初出品した際に作品の水準の高さに注目したウイーンのロスチャイルド家がヘレンドに投資を始め、また1851年ロンドンで開催された万国博覧会においては英国のヴィクトリア女王と出会う僥倖に恵まれ、女王は晩餐会用にとその場でディナーセットを注文します。これを契機に、王侯貴族からの注文が続々と舞い込むことになり、ヨーロッパを誇る名窯ヘレンドの黄金時代が幕を開けました。陶工や絵付師の熟練した技術と意匠による質の高い陶磁器はヘレンドのエスプリとして創業から200年近く経た現在も脈々と受け継がれています。
≫ジッツェンドルフ Sitzendorf ＜独＞ 1850年、ウィルヘム・リーブマン（Wilhelm Liebmann）がドイツ・チューリンゲン州の町ジッツェンドルフに設立した窯です。しかしその後、不運にも火事に見舞われた同社はその再建のため、1884年に経営権を実業家のフォイクト兄弟に譲渡します。以後、レースドールの開発など多岐にわたる事業の拡大に努め、急速に発展。同じドイツの磁器窯マイセンに比べ、力強く華やかな作風を特徴とし、1896年には株式会社に上場しました。二回の戦時中は一時衰退を余儀なくされるものの、積み重ねてきた歴史と名声に甘んじることなく、徹底した品質へのこだわりと、革新を恐れないあくなき探求心により、着実にヨーロッパ随一の陶磁器ブランドへと成長を続けています。
フランス≫エミール・ガレ Émile Gallé ＜仏＞ガレが制作した軟質陶器（ファイアンス）の多くは、ペースト状の陶土を鋳型に流し込んで成型後、釉薬をかけて焼成し、さらに絵付けをした後本焼きをして完成させるという技法でした。
≫リモージュ Limoges ＜仏＞ リモージュ陶器とは特定の工房の名称ではなく、1700年代後期以降、フランスのリモージュ地帯で生産される硬磁器全般を示すものです。 1730年代頃の主な産業はファヤンス陶器の小規模な生産のみでありましたが、その後、近隣地域のサンティリエ(Saint-Yrieix-la-Perche)の採石調査で良質なカオリンと磁泥が発見され、1768年より採石が本格化。1771年にはローヌ男爵アンヌ＝ロベール＝ジャック・テュルゴーにより陶磁器製造工場が設立されることとなります。当初、陶磁器の製造はルイ16世と彼の兄弟でリモージュ治者であったアルトワ伯爵の統治下に置かれていましたが、1784年にフランス王室が工場を買い取りました。現在、ベルナルド社やアビランド社などを始めとするリモージュの陶器は、19世紀に確立した世界最高峰の陶磁器産地としての地位を今なお維持し続け、高い人気を誇っています。
イギリス≫ウェッジウッド Josiah Wedgwood and Sons ＜英＞ウェッジウッドは1759年に設立された英国の陶磁器メーカーで、世界最大級の陶磁器メーカーの一つです。 イングランドの陶業は17世紀までデルフト陶器が主でしたが、18世紀に入ると上質陶器やストーンウェアがこれを代替。イングランド中部のスタッフォードシャー州は良質の粘土や石炭を産出する事などから陶業が急激に発展しました。 ジョサイア・ウェッジウッドはこの地方の陶工の息子として1730年に生まれました。数回の共同経営を経た後、1759年にバーズレムにある工場を叔父から引継ぎ、独立開業。この工場で開発した緑色の釉薬を用いた陶器は好評を博します。さらに会社の代表作となる、エナメルを用いたクリーム色の陶器を完成させました。これはシャーロット王妃（ジョージ3世の妻）にも納められ、「クイーンズウェア（Queen's Ware）」と呼ばれています。 ジョサイア（一世）の没後も経営は世襲され、事業内容を拡大して発展をつづけました。 現在は、低価格の硬質陶器を発売するなどの戦略を取り、陶磁器メーカーとして世界のトップシェアを争う存在であり続けています。
≫ロイヤル ウースター Royal Worcester ＜英＞ イギリスの陶磁器メーカー。1751年、ウィリアム・ディヴィスが経営者となり、化学者かつ医師のジョン・ウォール博士が技術面の指導をし、15人の株式出資者によってイングランド西ミッドランズ地域のウースター市にウースター磁器会社として創業されました。 1752年、ソープストーン（ステアタイル）を素地に混ぜて軟質磁器を作ったブリストル工房を合併します。ソープストーン磁器ペーストは、非常に薄く処理することができるので、食器用に大変適しており事業の拡大に貢献ました。以降は釉薬の上にエナメルカラーの絵付けを施す高度な技術や、銅版画転写法の技法により大量生産を可能にします。こうして高品質と生産性を両立させ、1789年にジョージ3世より、英国の陶磁器界で初のロイヤル（王室御用達）の称号を得ました。以後、現在までロイヤルの称号を途切れることなく受け続けている唯一の窯であり、現存する英国最古の名窯でもあります。1800年頃にはボーンチャイナの生産にも成功。1810年にグレンジャー社を買収し、同社が保有していた東洋的な青龍のデザインも承継しました。
イタリア、スペイン≫ジノリ Ginoli ＜伊＞ジノリは、1735年にイタリアのフィレンツェ近郊にあるドッチャで創業された高級磁器ブランドです。創業者カルロ・ジノリ侯爵は、ドイツのマイセン磁器に触発され、イタリア初の硬質磁器工房を設立しました。ジノリの磁器は、繊細なデザインと高い技術力で知られ、ヨーロッパの王侯貴族から愛されてきました。特に18世紀から19世紀にかけて、ジノリは芸術的な磁器の生産で名声を高め、今日に至るまでイタリア磁器の象徴として高く評価されています。
北欧≫ロイヤルコペンハーゲン Royal Copenhagen ＜デンマーク＞ロイヤルコペンハーゲンはデンマークの磁器メーカーで、1775年に創設されました。デンマーク王室の支援を受け、デンマークで最初に磁器を製造した企業として知られています。創業当初から、手描きのブルーフルーテッド（青い模様）シリーズが主力製品となり、今もなおブランドの象徴です。王室御用達の地位を獲得し、その洗練されたデザインと職人技で世界中に愛されています。ロイヤルコペンハーゲンは、伝統と革新を融合し、北欧の磁器ブランドとして不動の地位を築いています。
日本≫オールドノリタケ Early Noritake ＜英＞オールドノリタケとは、明治時代から昭和初期（1891年〜1940年頃）にかけて、日本のノリタケ（旧・森村組）が製造した高級陶磁器を指します。これらの製品は主にアメリカ市場向けに生産され、当時の西洋文化の影響を色濃く反映したデザインが特徴的です。金彩やエナメル装飾を用いた精緻な装飾が施された作品群は、アール・ヌーヴォーやアール・デコなど、西洋のデザイン様式を取り入れつつも日本独自の美意識を融合させた意欲的な作品が多く、これにより日本の陶磁器産業が国際市場で評価される契機となり、日本の工芸品が世界に広く認知される基盤を築きました。当時から現在まで、アンティーク市場のコレクターから高い人気を博しています。
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マイセン「ポプリポット」1924年以前
窯印
ドレスデン「花文透かしコンポート」1900年頃
窯印
ヘレンド「バラ文透し蓋物」1900年代中期
窯印
ジッツェンドルフ「少女たち」1900年代中期
窯印
エミール・ガレ「猫型置物」1890年頃
窯印
リモージュ「デミタスカップ＆ソーサー」1894-1930年頃
窯印
ウェッジウッド「金彩花文花瓶」1878-90年頃
窯印
ロイヤル ウースター「アザミ文飾り壺」1896年
窯印
ジノリ「ラスター彩C＆S」1930年頃
窯印
ロイヤルコペンハーゲン「ヘンリエッテ」1950-1983年頃
窯印
オールドノリタケ「パウダーボックス」1924-35年頃
窯印Photogallery by instagram
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