技法解説 - ガラス工芸アール・ヌーヴォー/アール・デコのガラス工芸技法≫被せガラス (きせガラス)（ Multicouche ＜仏＞）ガラス素地に違う色のガラスを被せ（部分的や全体に）、被せたガラスの方を酸化腐蝕彫りやグラヴュールなどをしてモチーフを表現する。色調が重層的となり、より深い表現が可能になる。
≫酸化腐蝕彫り（ Gravure à l'acide ＜仏＞） アシッドとも言われる。文様部分の被膜をパラフィンなどの保護膜で覆った後、文様を描きそれをフッ化水素と硫酸の混合液で腐蝕させて文様を作る。カメオグラスと総称されるものの大半はこの技法で作られる。
≫グラヴュール（ Gravure à la roue ＜仏＞） モチーフをレリーフ状に掘り出すのに使われる技法で、硬度の高い工具でガラス表面を研削する。その細工の細かさに応じて、ムール、ルー、モレット、シズレなどに分類される。
≫ヴィトリフィカシオン（ Vitrification des poudres ＜仏＞） 素地が熱いうちに色ガラスの粉をまぶして付着させ、再度窯の中で熱して、素地によく馴染ませる技法。色の混合を比較的容易に作り出せるのが特色で、ドームの作品に多く見られる。
≫異色溶かし込み（ Verre marmoréen ＜仏＞） ガラス素地の中に異なった色を溶かし込み、地紋や模様を作る技法。マーブル模様や縞目紋、斑紋などをガラスとガラスの間に挟むことで色合いをより豊かなものにする。
≫エナメル彩（ Émail ＜仏＞） 低融点の色ガラス粉末と油脂で一種のガラス絵の具を作り、これでモチーフを描いた後、低温窯で焼き付ける技法。ガラス顔料も透明、不透明があり、細かい技法の種類は多い。
≫オパルセント（ Opalescent ＜仏＞） ガラス原料の中に焼いた骨の灰や亜ヒ酸を混入させ、溶解させる事によって乳濁状にさせた。ラリックが愛用して一般化した。
≫パチネ（ Patiné ＜仏＞） エミール・ガレが特許を得た技法。ガラスの素地に色ガラスの粉末や炭塵、金属酸化物を混ぜて錆色などにくもらせる効果がある。古銅や古金属のような質感が生まれることもある。
≫アプリカシオン（ Application ＜仏＞） 予めモチーフの形に成形したガラスを熱し、まだ熱いうちに本体に溶着する技法。冷却後さらに細部をグラヴュールにより彫刻する場合が多い。
≫アンテルカレール（ Intercalaire ＜仏＞） 透明ガラスの層の間に色ガラスで作ったモチーフを挟みこみ、表面に彫刻を施してモチーフが重なって見えるようにする技法。
≫イリデセンス（ Iridescence ＜仏＞） 鉄、銅、マンガン、銀、金などを硝酸や王水に溶かし、さらに蒼鉛ラスターなどと混合してガラス素地が熱い内に噴霧状に吹付ける。熱で酸が蒸発するとガラス表面に金属の薄い被膜ができる。
≫エモービジュー（ Émaux Bijoux ＜仏＞） ガラスの表面に金属箔を溶着し、その上に半透明または透明なエナメルを被せ、低温で焼成して金箔や銀箔を浮き立たせる技法。
≫カボション（ Cabochon ＜仏＞） デザイン上のアクセントとして用いられ、半球状の色ガラスを溶着する。宝石のカボションカットに似た効果が生じる。
≫サリッシュール（ Salissure ＜仏＞） 酸化物の複雑な色調でモチーフをより引き立たせようという技法。ガラス素地に色々な金属酸化物の粉末を部分的にまぶしつけて熱し、斑紋を生じさせる。
≫ジヴレとグリザイユ（ Givré / Grisaille ＜仏＞） 酸の腐蝕によってガラスの肌を荒らし、変化をつける技法。霧氷模様をジヴレ、梨地模様に仕上げるのをフロストと呼ぶ。ジヴレ地にエナメル彩で灰色やセピアなどの淡色の濃淡で色づけしたものをグリザイユと呼ぶ。
≫スフレ（ Soufflé ＜仏＞） 凹刻した型の中にガラスを吹き込んで、基本形をつくる技法。モチーフをレリーフ状に彫刻したように制作することができる。
≫パートドゥヴェール（ Pâte de verre ＜仏＞） 粉々に砕いたガラスを型につめ、そのまま窯の中で焼き上げ、冷却後、型からはずして研磨する技法。ガラスの色を自由に調合でき、細かな部分にも着色できるため、表現力豊かな作品を作ることが可能。
≫マルケットリー（ Marqueterie ＜仏＞） いわゆる象嵌技法。ガラスの場合は、加熱した本体に色ガラスの小片をモチーフにそってはめ込んでいき、再び窯で熱して仕上げる。素地と色ガラスが融合して独特の効果をあげる。
≫ラメル（ Lamelle ＜仏＞） ガラスの薄片を高温で作品に溶着させ、ガラス上に多色層を作り出す技法。その後グラヴュールで研磨し装飾を整える。ガレのマルケットリー技法に相当する。
≫マルトレ（ Marteler ＜仏＞） ガラスの表面に金工細工に見られる、槌目のようなカット文様を出す技法。ドームの作品に多く見られる。
≫ペルルメタリック（ Perle métallique ＜仏＞） ガラスの層の間に、金箔や銀箔などの金属の細片を挟み込む事によってメタリックな発色の地紋を作り出す技法。
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